意外な発見があった檗溪川の夜ガサガサ
前々回、「帰郷します」という内容の記事をアップしたが、おかげさまで無事3泊4日の帰郷を果たす事ができた。
本来ならその際のレポートを今回アップするべきなのだけれど、そこは日韓ちゃんぽんなので、まずはたまっているイベントのレポートをアップしたいと思う。
さて、先日師匠や達人と語らった際に、한강납줄개(ハンガンナプジュルゲェ 漢江납줄개 和名ニセヨーロッパタナゴ Rhodeus pseudosericeus)に関するひとつの課題が提示された。それは、南漢江支流・흑천(フクチョン 黒川)にいる集団と北漢江支流・조종천(ジョージョンチョン 朝宗川)にいる集団は遺伝的に同一集団であることが分かったわけだが、その集団がどのように移動してきたのかを考察するために、黒川と朝宗川との間に存在する川で한강납줄개の生息を調査してみる必要がある、ということだった。
そこで、行けるところから検証してみようということで、行ってみたのが벽계천(ビョッキェーチョン 檗溪川)というところ。ここは過去に何度かガサガサしたことがあるが、記事として書いたのは旧日韓ちゃんぽんにて師匠やすごい人や大先輩(井上さん)とちょっとだけガサガサやってみたのを書いただけだったと思う。
この川は、北漢江が南漢江と交わる팔당호(パルダンホ 八堂湖)から清平ダムまでの間にある北漢江支流のうちのひとつである。유명산(ユーミョンサン 有明山)という避暑地の渓谷から端を発するこの川は、ソウルにほど近い川遊びの場として知られつつも、実はそのいくつかある支流の最上流部には산천어(サンチョノ 山川魚 和名ヤマメ サクラマス Oncorhynchus masou masou)が生息する。ソウルから50キロ圏でこんな条件の川は他にないのではないかと思う。
ちなみに、八堂湖から清平ダムまでにある主な北漢江支流には、朝宗川のほか、문호천(ムノチョン 汶湖川)、묵현천(ムッキョンチョン 墨峴川)、구운천(グーウンチョン 九雲川)がある。汶湖川はわしが何度か訪れて記事にしている。墨峴川は汚水処理場がありながらも汚水垂れ流しまくりで2ちゃんねるでもネタにされたことのある川。九雲川の上流にはソウルから最も近い「川遊び」の名所がある。
あと、유명산の峠と言えば、韓国の車雑誌のロードテストで有名な峠であり、毎週日曜になると高級外国車(日本車含む!!)やオートバイの走り屋が集まってくる。
それではいってみよう。
배가사리(ベガサリ 和名ホタテコブクロカマツカ Microphysogobio longidorsalis)だ。こいつが現れると言う事は、漢江水系の中上流域ということだ。
새코미꾸리(セコミックリ 和名ハナジロドジョウ Koreocobitis rotundicaudata)。早瀬に住むドジョウだ。石を1枚1枚めくって採集する。ほとんど群れないので1回の網にかかる새코미꾸리は大体1匹、多くて3匹といったところ。
쉬리(シュイリ 和名ヤガタムギツク シュリ Coreoleuciscus splendidus)。今年生まれた個体だが、この大きさは結構成長が良いほうだと思う。
꺽지(ッコクジ 和名コウライオヤニラミ コクチ Coreoperca herzi)。これは去年生まれた個体だな。オヤニラミだったらもうちょっと小さいのかな?
でもって、今年生まれた꺽지はこの大きさ。この大きさだと、魚はまだ無理で、虫なんかを食べているのだろうなと想像する。
おおっと、동사리(ドンサリ 和名コウライドンコ Odontobutis platycephala)だ。こいつが出てしまった。
驚きとともにちょっと残念な思いが。
実はわし、以前にも書いたが「동사리は北漢江水系では清平ダムより上流にしかいない」という仮説を立てていた。この仮説が今回崩れてしまった。
移動しているうちに、川底は早瀬のカボチャ石ゴロゴロから砂底へ。
얼룩동사리(オルルクドンサリ 和名セマダラドンコ Odontobutis interrupta)。抽水植物が生えている砂底や泥底を蹴るとよく出てくるな。
동사리との違いは、太い横帯が「切れている」こと。上の写真と比較していただきたい。
それから、동사리はどちらかというと流水志向、얼룩동사리はどちらかというと止水志向。凶悪なダークフォースをお望みの方には얼룩동사리のほうがお好みに合うかと思う。
そしてもう一つの発見。おおっと、絶滅危惧2種の가는돌고기(カヌントルコギ 和名ホソムギツク Pseudopungtungia tenuicorpa)がいたよ。돌고기(トルコギ 和名ムギツク Pungtungia herzi)と間違えて、鼻で笑いつつ放り投げるところだった。
こちらはオーソドックスな돌고기(トルコギ 和名ムギツク Pungtungia herzi)。これも今年生まれた個体だが、やっぱり成長が良いと思う。
참종개(チャムジョンゲェ 和名コウライシマドジョウ チョウセントゲドジョウ? Iksookimia koreensis)。こいつらは砂地に群れていることがある。
눈동자개(ヌンドンジャゲェ 和名クロギギ Pseudobagrus koreanus)。大きさもなかなか良く、20センチ級のが何匹かとれた。これならメウンタン1~2人前になるな。ギギやアカザのメウンタンは旨いよ。
참갈겨니(チャムカルギョニ 和名不明 カワムツの新種 チョウセンカワムツ? Zacco koreanus → Nipponocypris koreanus)。植物の茂った砂地で眠っているときがときどきある。こういう時って、피라미(ピラミ 和名オイカワ Zacco platypus)が出ずにこいつが出るんだよなぁ。
버들치(ボドゥルチ 和名コウライタカハヤ Rhynchocypris oxycephalus)。おやおや。こいつは水の冷たい支流から流されてきたものと思われる。小さいのばかり結構な個体数がいたけどな。
またもや가는돌고기(カヌントルコギ 和名ホソムギツク Pseudopungtungia tenuicorpa)。こりゃ偶然ではなくて、本当にこの場所に生息しているようだな。
こちらは돌고기(トルコギ 和名ムギツク Pungtungia herzi)。
가는돌고기と돌고기の違いは、가는돌고기の胴体がドジョウのように細長いこともあるが、それ以外にも口元と背びれの黒斑点の違いがある。といっても、ここの돌고기には背びれの黒斑点があるようだ。口元の違いは、簡単に言うと돌고기は前向きに対して가는돌고기は쉬리同様の下向き。
その쉬리(シュイリ 和名ヤガタムギツク シュリ Coreoleuciscus splendidus)。上の部分が平たい石を中心として、小さい群れを作っており、このように数匹まとめて網にかかることがある。ただし大物は単独で石の下にいることが多いかなぁ。
いわゆるオーソドックスな미꾸리(ミックリ 和名ドジョウ Misgurnus anguillicaudatus)。
フナだ。韓国にいるこの大きさのフナにしては体高が高いから、これは떡붕어(ットクブンオ 和名ヘラブナ Carassius cuvieri)かも。
さて、実はこの採集中にタナゴを見た。それがどうも黒いタナゴで……どうやら絶滅危惧種の묵납자루(ムンナプジャールー 和名チョウセンボテ Acheilognathus signifer → Tanakia signifer)のようだった。それで確認しようといろいろ歩き回ったのだけれど、結局タナゴは他の種含めて一匹も網に入らなかった。
あとで内水面関係のウェブページを調べていたら、どうやらこの檗溪川にはやはり묵납자루が生息するようだった。また、가는돌고기が生息するということも書いてあった。やはりそうだったのか。
というわけで、ちょっとした発見のあった日であった。
本来ならその際のレポートを今回アップするべきなのだけれど、そこは日韓ちゃんぽんなので、まずはたまっているイベントのレポートをアップしたいと思う。
さて、先日師匠や達人と語らった際に、한강납줄개(ハンガンナプジュルゲェ 漢江납줄개 和名ニセヨーロッパタナゴ Rhodeus pseudosericeus)に関するひとつの課題が提示された。それは、南漢江支流・흑천(フクチョン 黒川)にいる集団と北漢江支流・조종천(ジョージョンチョン 朝宗川)にいる集団は遺伝的に同一集団であることが分かったわけだが、その集団がどのように移動してきたのかを考察するために、黒川と朝宗川との間に存在する川で한강납줄개の生息を調査してみる必要がある、ということだった。
そこで、行けるところから検証してみようということで、行ってみたのが벽계천(ビョッキェーチョン 檗溪川)というところ。ここは過去に何度かガサガサしたことがあるが、記事として書いたのは旧日韓ちゃんぽんにて師匠やすごい人や大先輩(井上さん)とちょっとだけガサガサやってみたのを書いただけだったと思う。
この川は、北漢江が南漢江と交わる팔당호(パルダンホ 八堂湖)から清平ダムまでの間にある北漢江支流のうちのひとつである。유명산(ユーミョンサン 有明山)という避暑地の渓谷から端を発するこの川は、ソウルにほど近い川遊びの場として知られつつも、実はそのいくつかある支流の最上流部には산천어(サンチョノ 山川魚 和名ヤマメ サクラマス Oncorhynchus masou masou)が生息する。ソウルから50キロ圏でこんな条件の川は他にないのではないかと思う。
ちなみに、八堂湖から清平ダムまでにある主な北漢江支流には、朝宗川のほか、문호천(ムノチョン 汶湖川)、묵현천(ムッキョンチョン 墨峴川)、구운천(グーウンチョン 九雲川)がある。汶湖川はわしが何度か訪れて記事にしている。墨峴川は汚水処理場がありながらも汚水垂れ流しまくりで2ちゃんねるでもネタにされたことのある川。九雲川の上流にはソウルから最も近い「川遊び」の名所がある。
あと、유명산の峠と言えば、韓国の車雑誌のロードテストで有名な峠であり、毎週日曜になると高級外国車(日本車含む!!)やオートバイの走り屋が集まってくる。
それではいってみよう。
배가사리(ベガサリ 和名ホタテコブクロカマツカ Microphysogobio longidorsalis)だ。こいつが現れると言う事は、漢江水系の中上流域ということだ。
새코미꾸리(セコミックリ 和名ハナジロドジョウ Koreocobitis rotundicaudata)。早瀬に住むドジョウだ。石を1枚1枚めくって採集する。ほとんど群れないので1回の網にかかる새코미꾸리は大体1匹、多くて3匹といったところ。
쉬리(シュイリ 和名ヤガタムギツク シュリ Coreoleuciscus splendidus)。今年生まれた個体だが、この大きさは結構成長が良いほうだと思う。
꺽지(ッコクジ 和名コウライオヤニラミ コクチ Coreoperca herzi)。これは去年生まれた個体だな。オヤニラミだったらもうちょっと小さいのかな?
でもって、今年生まれた꺽지はこの大きさ。この大きさだと、魚はまだ無理で、虫なんかを食べているのだろうなと想像する。
おおっと、동사리(ドンサリ 和名コウライドンコ Odontobutis platycephala)だ。こいつが出てしまった。
驚きとともにちょっと残念な思いが。
実はわし、以前にも書いたが「동사리は北漢江水系では清平ダムより上流にしかいない」という仮説を立てていた。この仮説が今回崩れてしまった。
移動しているうちに、川底は早瀬のカボチャ石ゴロゴロから砂底へ。
얼룩동사리(オルルクドンサリ 和名セマダラドンコ Odontobutis interrupta)。抽水植物が生えている砂底や泥底を蹴るとよく出てくるな。
동사리との違いは、太い横帯が「切れている」こと。上の写真と比較していただきたい。
それから、동사리はどちらかというと流水志向、얼룩동사리はどちらかというと止水志向。凶悪なダークフォースをお望みの方には얼룩동사리のほうがお好みに合うかと思う。
そしてもう一つの発見。おおっと、絶滅危惧2種の가는돌고기(カヌントルコギ 和名ホソムギツク Pseudopungtungia tenuicorpa)がいたよ。돌고기(トルコギ 和名ムギツク Pungtungia herzi)と間違えて、鼻で笑いつつ放り投げるところだった。
こちらはオーソドックスな돌고기(トルコギ 和名ムギツク Pungtungia herzi)。これも今年生まれた個体だが、やっぱり成長が良いと思う。
참종개(チャムジョンゲェ 和名コウライシマドジョウ チョウセントゲドジョウ? Iksookimia koreensis)。こいつらは砂地に群れていることがある。
눈동자개(ヌンドンジャゲェ 和名クロギギ Pseudobagrus koreanus)。大きさもなかなか良く、20センチ級のが何匹かとれた。これならメウンタン1~2人前になるな。ギギやアカザのメウンタンは旨いよ。
참갈겨니(チャムカルギョニ 和名不明 カワムツの新種 チョウセンカワムツ? Zacco koreanus → Nipponocypris koreanus)。植物の茂った砂地で眠っているときがときどきある。こういう時って、피라미(ピラミ 和名オイカワ Zacco platypus)が出ずにこいつが出るんだよなぁ。
버들치(ボドゥルチ 和名コウライタカハヤ Rhynchocypris oxycephalus)。おやおや。こいつは水の冷たい支流から流されてきたものと思われる。小さいのばかり結構な個体数がいたけどな。
またもや가는돌고기(カヌントルコギ 和名ホソムギツク Pseudopungtungia tenuicorpa)。こりゃ偶然ではなくて、本当にこの場所に生息しているようだな。
こちらは돌고기(トルコギ 和名ムギツク Pungtungia herzi)。
가는돌고기と돌고기の違いは、가는돌고기の胴体がドジョウのように細長いこともあるが、それ以外にも口元と背びれの黒斑点の違いがある。といっても、ここの돌고기には背びれの黒斑点があるようだ。口元の違いは、簡単に言うと돌고기は前向きに対して가는돌고기は쉬리同様の下向き。
その쉬리(シュイリ 和名ヤガタムギツク シュリ Coreoleuciscus splendidus)。上の部分が平たい石を中心として、小さい群れを作っており、このように数匹まとめて網にかかることがある。ただし大物は単独で石の下にいることが多いかなぁ。
いわゆるオーソドックスな미꾸리(ミックリ 和名ドジョウ Misgurnus anguillicaudatus)。
フナだ。韓国にいるこの大きさのフナにしては体高が高いから、これは떡붕어(ットクブンオ 和名ヘラブナ Carassius cuvieri)かも。
さて、実はこの採集中にタナゴを見た。それがどうも黒いタナゴで……どうやら絶滅危惧種の묵납자루(ムンナプジャールー 和名チョウセンボテ Acheilognathus signifer → Tanakia signifer)のようだった。それで確認しようといろいろ歩き回ったのだけれど、結局タナゴは他の種含めて一匹も網に入らなかった。
あとで内水面関係のウェブページを調べていたら、どうやらこの檗溪川にはやはり묵납자루が生息するようだった。また、가는돌고기が生息するということも書いてあった。やはりそうだったのか。
というわけで、ちょっとした発見のあった日であった。
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コメント
No title
無事に旅を終えられて何よりです。
タナゴは残念でしたね。
私はホソムギツクの画像に見とれてしまいましたよ~。
細いムギツクと言ったらそれまでかも知れませんが、単純に魚として見てもかなり体高の低いお魚ですよね。
タナゴは残念でしたね。
私はホソムギツクの画像に見とれてしまいましたよ~。
細いムギツクと言ったらそれまでかも知れませんが、単純に魚として見てもかなり体高の低いお魚ですよね。
Re: No title
アヤヨシ様
コメント有難うございます。
> 無事に旅を終えられて何よりです。
もっと日程に余裕があって、アヤヨシ様にご挨拶させていただけたらと思いましたが、やはり3泊4日は空き時間がほとんどありませんでした。
> タナゴは残念でしたね。
> 私はホソムギツクの画像に見とれてしまいましたよ~。
>
> 細いムギツクと言ったらそれまでかも知れませんが、単純に魚として見てもかなり体高の低いお魚ですよね。
そうですね。ひょろっとした魚です。
ムギツクとは口がはっきり違うのですよ。あのふてぶてしい前向き口ではなくて、善良そうな下向き口なのですよ~。
コメント有難うございます。
> 無事に旅を終えられて何よりです。
もっと日程に余裕があって、アヤヨシ様にご挨拶させていただけたらと思いましたが、やはり3泊4日は空き時間がほとんどありませんでした。
> タナゴは残念でしたね。
> 私はホソムギツクの画像に見とれてしまいましたよ~。
>
> 細いムギツクと言ったらそれまでかも知れませんが、単純に魚として見てもかなり体高の低いお魚ですよね。
そうですね。ひょろっとした魚です。
ムギツクとは口がはっきり違うのですよ。あのふてぶてしい前向き口ではなくて、善良そうな下向き口なのですよ~。