楊平龍門の夜ガサガサ

先日、日本の九州からおいかわ丸さんが初めて韓国に来られた
事前にメールをいただいていたのだけど、わしのほうが本当に申し訳なくも日程に折り合いが合わず。ものすごくあわただしい最中で御挨拶に伺うことすらできなかった。
そしたらなんと、ネイティブのお供の方がいらっしゃったようで、韓国でガサガサまでされた模様。
なんてこったい。
漢江水系でソウルから負担無く行けて清流の流れるところ、といえば、양평(ヤンピョン 楊平)あたりかなぁと思っていたら、おいかわ丸さんからいただいたメールでおおむね正解であることが判明。
なーんだ、その辺なら仕事が遅くなった帰りにガサガサしに行けない距離ではないなと思い立ち、車をさくさくっと走らせて着いた場所がここ。

20110514012727.jpg
………そして到着してから判明。

場所を間違えちゃった。(ㅠ ㅠ)

カーナビの縮尺を調整しないで「この辺だろう。ふふふのふん」と目標地指定をやったのが運の尽き。スマートフォンで現在位置の衛星写真を表示させてみたら、おいかわ丸さんたちがガサガサされた場所よりもさらにもう一歩踏み込んだ場所だった。

でもまぁ、夜中だし今更戻るのもなんなのでこの場所で採集を試みた。

もう一歩踏み込んだ場所、というのは表現が適切でなさそうなので補足する。
양평(ヤンピョン 楊平)郡には南漢江の支流で흑천(フクチョン 黒川)という川がある。その川の流れるところに용문(ヨンムン 龍門)という村がある。용문산(ヨンムンサン 龍門山)という、ソウル市からおそらく一番近い標高1000メートル超の山のふもとだからその名前が付いていると思うのだが、今回ガサガサを行ったのはその村にある、黒川の支流。でもっておいかわ丸さんたちは龍門の村をはさんで黒川の下流側の支流で、わしは上流側の支流でガサガサを行ったわけだ。

なお、この黒川沿いにさらにちょっとだけ上流に行くと、京畿道淡水魚研究所という、道立(要するに県立)の研究所兼展示施設がある。ここは旧ブログにて井上さんや師匠やすごい人とともに冬の南漢江ガサガサのあと立ち寄ったところであり、井上さんが큰줄납자루(クンジュルラプジャールー 和名オオイチモンジタナゴ Acheilognathus majusculus)との衝撃的な出会いをした場所でもある。
ただこのことはおいかわ丸さんたちはご存知でなかったようだ。今度韓国に来られた際はぜひ御招待したい。

 
というわけでさっそく網を入れてみた。

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最初にかかったのは돌고기(トルコギ 和名ムギツク Pungtungia herzi)と얼룩동사리(オルルクドンサリ 和名セマダラドンコ Odontobutis interrupta)。わしは網を入れて最初にかかる魚で今回のガサガサに運が向いているかどうかを見たりする。돌고기はねぇ……まぁ「はずれ」ですかなぁ。大きな発見は期待できそうにないということか。

얼룩동사리(オルルクドンサリ 和名セマダラドンコ Odontobutis interrupta)
その얼룩동사리(オルルクドンサリ 和名セマダラドンコ Odontobutis interrupta)。このくらいの大きさだったらかわいらしいのだけどな。

한강납줄개(ハンガンナプジュルゲェ 漢江납줄개 和名ニセヨーロッパタナゴ Rhodeus pseudosericeus)
そして出ました한강납줄개(ハンガンナプジュルゲェ 漢江납줄개 和名ニセヨーロッパタナゴ Rhodeus pseudosericeus)。この한강납줄개は2001年に新種登録された種で、南漢江のごく限られた場所に生息する。黒川はそのごく限られた場所のひとつで、この川とその支流には結構いるはずなのだ。ちなみに何度か御紹介したとおり、わしの家の前の川にもこれが生息しているが、そこは北漢江の水系になるわけで生息域としてはかなり例外の部類に当たる。

새코미꾸리(セコミックリ 和名ハナジロドジョウ Koreocobitis rotundicaudata)
새코미꾸리(セコミックリ 和名ハナジロドジョウ Koreocobitis rotundicaudata)は堰の下の止水域で石がごろごろしているところに、石と石の間から顔をのぞかせたり尾びれをのぞかせたりしていた。Koreocobitisは砂底志向ではなくて早瀬志向なのだ。

참종개(チャムジョンゲェ 和名コウライシマドジョウ チョウセントゲドジョウ? Iksookimia koreensis)
참종개(チャムジョンゲェ 和名コウライシマドジョウ チョウセントゲドジョウ? Iksookimia koreensis)。こいつは普通に砂底志向。割といろんなところにいるが、泥底では見かけない。

대륙종개(デェーリュクジョンゲェ 大陸條鰍 和名不明 continental stone loach = タイリクフクドジョウ? Orthrias nudus)
早瀬志向のドジョウといえばこいつ、대륙종개(デェーリュクジョンゲェ 大陸條鰍 和名不明 continental stone loach = タイリクフクドジョウ? Orthrias nudus)も忘れてはいけない。下流域には生息しない、だいたい上流域に生息する魚だ。

꺽지(ッコクジ 和名コウライオヤニラミ コクチ Coreoperca herzi)
꺽지(ッコクジ 和名コウライオヤニラミ コクチ Coreoperca herzi)。こいつは小さいが、そこそこの大きさのが数匹とれたので後ほど写真をあげることにする。

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쉬리(シュイリ 和名ヤガタムギツク シュリ Coreoleuciscus splendidus)が早瀬の石の下から出てきた。見よこの黄金色のうろこを。これを夜のガサガサで早瀬の澄んだ水のその下に発見したら、ドキッとするのでありますよ。

얼룩동사리(オルルクドンサリ 和名セマダラドンコ Odontobutis interrupta)
얼룩동사리(オルルクドンサリ 和名セマダラドンコ Odontobutis interrupta)のこれまた良いサイズがとれた。このサイズになると口は凶器。素手で口に触れたくはありませぬ。

긴몰개(ギンモルゲェ 和名ホソモロコ Squalidus gracilis majimae)
긴몰개(ギンモルゲェ 和名ホソモロコ Squalidus gracilis majimae)。なんか本当にどこにでもいるって感じ。

참갈겨니(チャムカルギョニ 和名不明 カワムツの新種 チョウセンカワムツ? Zacco koreanus → Nipponocypris koreanus)
참갈겨니(チャムカルギョニ 和名不明 カワムツの新種 チョウセンカワムツ? Zacco koreanus → Nipponocypris koreanus)。갈겨니(カルギョニ 和名カワムツ Zacco temminckii → Nipponocypris temminckii)と比べて、目が大きいと思う。まぁ他にも形態的特徴があるのだけど。

모래무지(モレムジ 和名カマツカ Pseudogobio esocinus)
모래무지(モレムジ 和名カマツカ Pseudogobio esocinus)。やっぱりこれが出てこないとちょっと寂しい。でも今回練り歩いたところは砂地のところがほとんどなくて、砂と泥の交じり合った川底のボサの陰から1匹だけ採集できた。

한강납줄개(ハンガンナプジュルゲェ 漢江납줄개 和名ニセヨーロッパタナゴ Rhodeus pseudosericeus)
한강납줄개(ハンガンナプジュルゲェ 漢江납줄개 和名ニセヨーロッパタナゴ Rhodeus pseudosericeus)なのだけど、なんという発色。すげー。全身パープルメタリックですよ。惜しむらくはこの個体、ポップアイやらいろいろ病気を併発していてもう死にそう。


今回は網でとったばかりの写真が上から写したのばかりしかなくてかなり不本意だったので、夜だけど撮影タイム。


쉬리(シュイリ 和名ヤガタムギツク シュリ Coreoleuciscus splendidus)
うほっ。ここまでゴールデンな쉬리(シュイリ 和名ヤガタムギツク シュリ Coreoleuciscus splendidus)はなんと久しぶりだろう。いったいどんな環境で何を食って生活したらこんな色になるのだろう。飼育下だと虹色のラインも消えうせて白黒ツートンのようになってしまうのだ。

납지리(ナプジーリー 和名カネヒラ Acheilognathus rhombeus)
現場での同定が難しい魚がいたのでとりあえず写真を撮って後でじっくり見てみようと思ったのも撮影タイムをした理由のひとつ。こいつは납지리(ナプジーリー 和名カネヒラ Acheilognathus rhombeus)でいいと思う。

납지리(ナプジーリー 和名カネヒラ Acheilognathus rhombeus)
납지리(ナプジーリー 和名カネヒラ Acheilognathus rhombeus)。こちらはもうちょっと分かりやすい。

참갈겨니(チャムカルギョニ 和名不明 カワムツの新種 チョウセンカワムツ? Zacco koreanus → Nipponocypris koreanus)
참갈겨니(チャムカルギョニ 和名不明 カワムツの新種 チョウセンカワムツ? Zacco koreanus → Nipponocypris koreanus)もこうして見たら婚姻色が出ているな。

긴몰개(ギンモルゲェ 和名ホソモロコ Squalidus gracilis majimae)
お腹のふくらんだ긴몰개(ギンモルゲェ 和名ホソモロコ Squalidus gracilis majimae)。ちょっと腹を押すだけで卵が出てきそう。

꺽지(ッコクジ 和名コウライオヤニラミ コクチ Coreoperca herzi)
꺽지(ッコクジ 和名コウライオヤニラミ コクチ Coreoperca herzi)。スポットのきれいさではわしの家の前の川には敵わないようだ。漢江水系の꺽지はスポットがあり、ほかの水系の꺽지にはスポットが出ないのだ。

새코미꾸리(セコミックリ 和名ハナジロドジョウ Koreocobitis rotundicaudata)
새코미꾸리(セコミックリ 和名ハナジロドジョウ Koreocobitis rotundicaudata)。日本で普段シマドジョウなどをご覧になっている方にこの大きさの새코미꾸리を見せると目を丸くする。ちなみにこの大きさは새코미꾸리としては普通の大物サイズ。

참종개(チャムジョンゲェ 和名コウライシマドジョウ チョウセントゲドジョウ? Iksookimia koreensis)
참종개(チャムジョンゲェ 和名コウライシマドジョウ チョウセントゲドジョウ? Iksookimia koreensis)。この模様も地方によって違うらしいのだが。

대륙종개(デェーリュクジョンゲェ 大陸條鰍 和名不明 continental stone loach = タイリクフクドジョウ? Orthrias nudus)
대륙종개(デェーリュクジョンゲェ 大陸條鰍 和名不明 continental stone loach = タイリクフクドジョウ? Orthrias nudus)。ライアマスさんに見せていただいた満州魚類誌に、この近縁種である종개(ジョンゲェ 條鰍 和名不明 Siberian stone loach = シベリアフクドジョウ? Orthrias toni)に対しては「タカノハモドキ」という和名がついていた。

한강납줄개(ハンガンナプジュルゲェ 漢江납줄개 和名ニセヨーロッパタナゴ Rhodeus pseudosericeus)
最後に한강납줄개(ハンガンナプジュルゲェ 漢江납줄개 和名ニセヨーロッパタナゴ Rhodeus pseudosericeus)。ゴールデンとパープルの色合いが美しいオス。韓国の淡水魚好きな方々は、한강납줄개を「野性味あふれる美しさ」と表現する。


今回はこれでおしまい。黒川とその支流では、時間をもっとかければ、눈동자개(ヌンドンジャゲェ 和名クロギギ Pseudobagrus koreanus)、돌마자(トルマジャ 和名ムナイタカマツカ Microphysogobio yaluensis)、배가사리(ベガサリ 和名ホタテコブクロカマツカ Microphysogobio longidorsalis)、참마자(チャムマジャ 和名ズナガニゴイ Hemibarbus longirostris)、참붕어(チャムブンオ 和名モツゴ Pseudorasbora parva)、퉁가리(トゥンガリ 和名コウライアカザ Liobagrus andersoni)は十分採集できただろうと思う。
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コメント

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No title

夜間撮影(フラッシュ)の所為でしょうか。紫色が美しいですね。
昼間に見た한강납줄개には無かった色ですよ。

婚姻色の出た雄の姿は正に「野性味あふれる美しさ」でした。
とくにその肩の張った体躯のことを云われてるんでしょうね。

새코미꾸리は威風堂々、大迫力ですな。肉付きも脂ののり具合も申し分ないぞ。
こいつ一笊を浅草の「駒方どぜう」に持ち込んで、柳川鍋で一杯やったら堪えられねぇだろうなぁ。
いやいや、韓国固有種で国外持ち出し禁止種でしょうから、無茶言ってはいけません。はい。

Re: No title

井上様
この紫色はカメラのフラッシュのせいではないと思いますよ。実際肉眼で見て紫色をしておりました。もしかしてLEDライトに照らされると紫色に見えるなんてことが!?

> 새코미꾸리は威風堂々、大迫力ですな。肉付きも脂ののり具合も申し分ないぞ。
> こいつ一笊を浅草の「駒方どぜう」に持ち込んで、柳川鍋で一杯やったら堪えられねぇだろうなぁ。
> いやいや、韓国固有種で国外持ち出し禁止種でしょうから、無茶言ってはいけません。はい。

「国外搬出承認対象生物資源」については、魚類は「生体及びその卵、標本を含む」と書いてありました。
「死体」は「標本」に含まれるのでしょうかね。「食材」と化したものについてはどうなんでしょうか。

No title

アキミツ様

みなさん,韓国に行かれて,指をくわえて見ている自分が悲しいです.

さて,井上さんとのやりとりで,
>「国外搬出承認対象生物資源」については、魚類は「生体及びその卵、標本を含む」と書いてありました。
>「死体」は「標本」に含まれるのでしょうかね。「食材」と化したものについてはどうなんでしょうか。
とあるのは死体も標本に含まれるんじゃないでしょうか.

インドの友人に魚の標本を小包で発送してもらおうとした際は,標本はアウトで没収で,
同梱の魚の本だけ日本に届きました.
状況がインドと韓国で同じかどうか分かりませんが,韓国は魚の扱いには厳しい印象を受けますので,食品以外はダメなんじゃないでしょうかネ.

No title

アキミツ様、らいあます様、こんにちは。

斯く成る上は現地で喰らうしなか無いですなぁ、새코미꾸리(ハナジロドジョウ)の柳川鍋。
ゴボウや三つ葉、卵は現地調達可能でしょうから、煮汁を魔法瓶に入れて行けば大丈夫。
オッと、粉山椒と純米酒を忘れてはいけませんです。

> もしかしてLEDライトに照らされると紫色に見えるなんてことが!?

大発見ですね。昼間には肉眼でも写真でも紫色はでませんでしたよ。
今度(釣ったときには)よく観察しますね。

標本の中に、死体と云うジャンルが在るんでしょうか。
他には生体(活魚)、乾燥体(メザシ)、発酵体(クサヤ)とかも・・・?
食材と標本の区別はどの辺りでしょう。味付けでしょうか。包装でしょうかねぇ。

Re: No title

ライアマス様
ぜひ韓国にいらしてください!


> インドの友人に魚の標本を小包で発送してもらおうとした際は,標本はアウトで没収で,
> 同梱の魚の本だけ日本に届きました.
> 状況がインドと韓国で同じかどうか分かりませんが,韓国は魚の扱いには厳しい印象を受けますので,
> 食品以外はダメなんじゃないでしょうかネ.

そうでしたか。標本として研究機関に残るものは特に法的手続がしっかりなされていないといけませんね。
これは一度漢江流域環境庁に行って話を聞いてみましょうかね。相手してくれると有難いのですが。

Re: No title

井上様

> 斯く成る上は現地で喰らうしなか無いですなぁ、새코미꾸리(ハナジロドジョウ)の柳川鍋。

柳川をやりますか(^^;;
それでは、ハナジロドジョウが大量採集できる場所を探しておかないといけませんな。
え?こつこつ捕まえておいて泥抜きをしておけと!?ww
プロフィール

アキミツ

Author:アキミツ
97年から韓国に住んでいます。妻は韓国人、子供たちは二重国籍です。
韓国の田舎で野良仕事からサーバー管理まで仕事をしつつ、ときどき川に行ってはガサガサして魚をとってます。

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