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2011夏のガサガサその4 江原道平昌郡

その3 江原道原州市」の続き。

我々は50号영동(ヨンドン 嶺東)高速道路をさらに東へと走った。向かった場所は同じ강원도(カンウォンド 江原道)は평창군(ピョンチャングン 平昌郡)。
平昌といえば、最近2018年冬季オリンピック開催場所として選ばれた場所だが、ひとえに平昌郡といってもとても広い。平昌の郡庁所在地(ようするに平昌の中心という事になっているところ)から冬季オリンピックのメイン会場となるところまで直線距離にして40キロ、自動車だと高速道路利用・法廷速度遵守で1時間20分かかるほどだ。

そんな中、我々が向かったところは진부면(ジンブーミョン 珍富面)というところ。ちなみに「면(ミョン 面)」というのは日本の住所で言うところの「村」に相当する。ここには오대천(オーデーチョン 五台川)という川が流れている。
この五台川の源泉は오대산(オーデーサン 五台山)というところにある。この山は国立公園となっており、国立公園内ではすべての山河における狩猟・捕獲・採集等が禁止されている。その国立公園から流れ出た川が最初に訪れる平地が今回の採集場所である。なお、この川はこの平地を抜けた後、渓流部・山間部を抜けて정선(ジョンソン 旌善)というところで南漢江と合流する。その場所は以前に「東江(トンガン)」というところで紹介した「동강(トンガン 東江)」と呼ばれる南漢江の山間部地域一帯のさらに上流に当たる。
つまり、今回の採集地点は、南漢江水系の上流部、それも相当上流の魚相となっていると言えるのだ。

20110726154140.jpg
採集場所はこんなところ。この堰の下だ。
この堰には魚道があるが、ちゃんと魚道として機能しており、魚が元気に遡上している。また、堰の下のコンクリートは円環状になっていて、その間々にはゴロゴロした石や小石が詰まっており、魚の住処や産卵場としても機能しているようだ。そしてまた人工的な設備の先には結構な深さで魚たちが回遊する事のできるところがあった。

 
20110726160139.jpg
実はここでシュノーケリングを計画されていたおいかわ丸さんとTommyさん。「泳いでいるところを目で見る」というのも今回の計画のうちだったからだ。
韓国の川は以前にも書いた事があるが、平地を流れる川の上流には山間部があり、渓流のような岩のごつごつしたところもあったりするが、さらにその上流には平地が広がっている、なんてことが多い。それで、シュノーケリングをするならば水のきれいなところで、と思い、この平地から上流にはもう国立公園しかないというこの場所を選んだのだ。だが……雨の影響もあって、残念ながら水は「すんげー綺麗」というわけにはいかなかった。それでも魚を眺めることのできる程度の澄み具合だった。


おいかわ丸さんとTommyさんが先行して川に入り、「うおおおおお」とか「やばい!」とか叫んでいるのを聞きつつ、さあわしもやってみよう、とコンクリートの間の石底をガサガサしてみると……

20110726155247.jpg
うほっ。なんじゃあこりゃ。ここでの代表的な魚が1匹ずつ網にかかったって感じ。
まず左から쉬리(シュイリ 和名ヤガタムギツク シュリ Coreoleuciscus splendidus)。ここへ来てようやく成魚が網にかかった。夏場なので上部の体色が結構黒くなってしまっている。
真ん中の横になっている奴は돌고기(トルコギ 和名ムギツク Pungtungia herzi)じゃないぞ。体の細さを見よ。これぞ가는돌고기(カヌントルコギ 和名ホソムギツク Pseudopungtungia tenuicorpa)だ。絶滅危惧2種だ。
右に縦に3つ並んでいるののうち、小さいのは참갈겨니(チャムカルギョニ 和名不明 カワムツの新種 チョウセンカワムツ? Zacco koreanus → Nipponocypris koreanus)の稚魚。ちょっと見づらいけどな。
そして真ん中のをクローズアップ。
새미(セェミ 和名ミナガミヒガイ Ladislabia taczanowskii)
よっしゃLadislabia来たあああぁぁぁっ!(`・ω・´)=3
久しぶりに見る새미(セェミ 和名ミナガミヒガイ Ladislabia taczanowskii)。若いけど成魚だよ。今回のこの場所はこれをお見せしたくてやってきたようなものなのだ。

배가사리(ベガサリ 和名ホタテコブクロカマツカ Microphysogobio longidorsalis)
そして、小型カマツカ亜科として배가사리(ベガサリ 和名ホタテコブクロカマツカ Microphysogobio longidorsalis)。当然こいつはいるでしょう、と思ったらちゃんといた。

20110726162930.jpg
もうとれたそばから写真を撮っていくおいかわ丸さん。


さあ、かくして写真タイム。


ちょっと待て。他には?

ええと、他には참갈겨니(チャムカルギョニ 和名不明 カワムツの新種 チョウセンカワムツ? Zacco koreanus → Nipponocypris koreanus)の大きいのとか、もちろん피라미(ピラミ 和名オイカワ Zacco platypus)もとれた。대륙종개(デェーリュクジョンゲェ 大陸條鰍 和名不明 continental stone loach = タイリクフクドジョウ? Orthrias nudus)と思われるフクドジョウもいた。


いや、ドジョウならそれじゃなくて。

あー、새코미꾸리(セコミックリ 和名ハナジロドジョウ Koreocobitis rotundicaudata)の成魚も結局とれなかったなぁ……。


とれなきゃいけない魚がいたでしょ?

あー、うー、はい。とりあえず大きな모래무지(モレムジ 和名カマツカ Pseudogobio esocinus)はおいかわ丸さんがゲットしました。しかも素手で。
20110726172800.jpg
カマツカを念入りに観察する様子。
カマツカをつかむ際にはコツがあるとのこと。曰く、頭部を指でがっと固定すれば、ビクビクッとなって、カマツカはそれ以上動かなくなる。そこですうっと引き出す。その指のかたちを見せてくださりながら、「この方法が韓国のカマツカに対して通用するかとやってみたら、通用した。ああやはりカマツカなんだなと思った」と説明をしてくださった。


おいおーい、他にもここでとれそうな魚種がいたんじゃなかったのかよ。

いや…その…わしも「タナゴ」を探したんだけどね。石の下にいる、「タビラみたいなタナゴ」とか「渋すぎるタナゴ」とかね。でもとれんかった。
「ニゴイ」も探したんだけど、やっぱり午後は回遊時間だから難しかった。いることすら確認できなかった。あ、でも「違うニゴイ」である참마자(チャムマジャ 和名ズナガニゴイ Hemibarbus longirostris)ならおいかわ丸さんもTommyさんもシュノーケリングで姿を確認しているよ。


で、肉食魚は?

えー、そのー、눈동자개(ヌンドンジャゲェ 和名クロギギ Pseudobagrus koreanus)はとれたけどどうせその2でとれてるし。
……結局꺽지(ッコクジ 和名コウライオヤニラミ コクチ Coreoperca herzi)も퉁가리(トゥンガリ 和名コウライアカザ Liobagrus andersoni)もとれなかった。なんてこったい。쏘가리(ッソガリ 和名コウライケツギョ 高麗桂魚 Siniperca scherzeri)は万が一とれたら超ラッキーと思うくらい最初からあきらめていたけど。
미유기(ミユギ 和名コウライヤナギナマズ Silurus microdorsalis)もここならゲットできる可能性があったのにとれなかった。


わしとしては結構敗北感を感じつつ写真タイム。

배가사리(ベガサリ 和名ホタテコブクロカマツカ Microphysogobio longidorsalis)
これはよい배가사리(ベガサリ 和名ホタテコブクロカマツカ Microphysogobio longidorsalis)の雄。もう夏なので婚姻色は落ちているが、それでも背びれのオレンジ色と鼻の先のニキビが婚姻色を感じさせてくれる。
体長10センチといったところだが、배가사리はこの1.5倍以上に大きくなりますぞ。

가는돌고기(カヌントルコギ 和名ホソムギツク Pseudopungtungia tenuicorpa)
가는돌고기(カヌントルコギ 和名ホソムギツク Pseudopungtungia tenuicorpa)。Tommyさん一言「細っ!」。
水中で見て、ヘロヘロと動く様子がムギツクらしくなかったとのこと。

새미(セェミ 和名ミナガミヒガイ Ladislabia taczanowskii)
そして今回の本命、らいあますさんをして「コイ科のどの魚とも似ていない!」と呻らしめた새미(セェミ 和名ミナガミヒガイ Ladislabia taczanowskii)。
ヒガイの名は仮の姿。産卵には貝は必要ないらしく、また雌は産卵管が伸びる事もないらしい。産卵は雄が尾びれでガガガガッと小石の川底を掘ってくぼみを作り、そこで産卵放精が行われるらしいが、その姿が観察されたのはごくごく最近(2009年とか2010年とかそのレベル)で、それまではいつ頃どのような方法で繁殖しているのかすら謎だった。

금강모치(クムガンモーチー 金剛모치 和名コンゴウハヤ Rhynchocypris kumgangensis)
漢江上流部の魚として忘れてはいけないのが금강모치(クムガンモーチー 金剛모치 和名コンゴウハヤ Rhynchocypris kumgangensis)。本当はもう少しオレンジ色のラインが出ている個体がいたのだけど、ひれが傷ついているか何かの理由でこいつを写真に収めることになった。
体に入るオレンジのラインを見て、お二人曰く「ウグイみたいですね」。なるほどまるで小さなウグイですか。このオレンジのラインは雄も雌も産卵期に良く出るのだ。雄だと思って手で体をつまんでみたら卵が出てきたりするのだ。
この금강모치のすごいところは、何より人を恐れないという事。行くところへ行ってシュノーケリングをすれば、目の前で群泳してくれるし、エサが出ればそこはハヤだからな。猛烈な食欲で群がってきたりするのだ。

배가사리(ベガサリ 和名ホタテコブクロカマツカ Microphysogobio longidorsalis)
こちらは배가사리(ベガサリ 和名ホタテコブクロカマツカ Microphysogobio longidorsalis)の雌。배가사리は撮影用水槽に入れると時より「後ずさり」する。その様子が可愛かったりする。


かくして採集は終了。
土手の上に上がってくると、近所のアジュンマが駆け寄ってきて「たくさんとれたでしょ!」というので、「いいえ、調査ですから持って来たのはこれだけです」と魚が数匹しか入っていない採集用水槽を見せた。アジュンマたちはちょっと残念そうに帰っていったが、要は自分の店でメウンタン作ってやるから魚出せ、でなければコーヒー一杯でも飲んで行け、ということなのだろう。残念、我々にはおいしい食事が予約されているのさ。


というわけで、「お持ち帰りぃ~!」してきた새미たち。メンテナンスをした上でじっくり写真を撮ろうと思っていたら、どうも白点にかかってしまったようで、それが出ていて申し訳ないのだが急遽写真を撮り、メンテナンスは白点駆除の方向に切り替える事にした。

새미(セェミ 和名ミナガミヒガイ Ladislabia taczanowskii)
うーむ、確かにヒガイでもない。ムギツクでもない。フライングフォックスでもない。

새미(セェミ 和名ミナガミヒガイ Ladislabia taczanowskii)
こっちは別個体。これは漢江水系の새미だが、日本海側に流れる삼척(サムチョク 三陟)오십천(オーシプチョン 五十川)の水系にいる새미はまた違った感じがするらしい。

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tag : Ladislabia

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No title

アキミツさん

ミナガミヒガイ,これまたいいですね~.

こいつが何の近くいるか,私も参加させていただいたKeving Tang さんのカマツカ亜科の分子系統解析の結果,
明らかになりました.

論文はメールでお送りするとして,結論からいうと,ヒガイ族と定義された系統樹の中にはいましたが,
やはりヒガイのそばにはおりませんでした.

このそばには,
Coreius, Paracanthobrama, Rhinogobioといったカマツカ亜科が含まれていて,日本人には馴染みのない大陸のカマツカ亜科のなかでした.Coreiusなんかはかなり風貌が特徴的で,なぜ彼らが近いのか,外見からでは理解不可能です.

カマツカ亜科,やっぱり奥が深いですね.

No title

第3ポイントでは相当叫びましたが,このポイントでも負けじと叫びました(笑).水中で泳ぐ姿や採餌する姿を見ることができたのは
とてもよかったです.ただ,水中で叫ぶと水を飲んでしまうのですが….

群れを成して石の表面をなめるホタテコブクロカマツカ,ボサの下に群れる何とも言えない顔つきとスタイルをしたミナガミヒガイ,ムギツクと
混群を作りながらひらひら泳ぎ回るホソムギツク,光り輝き息(水)をのむほど美しいシュリやコンゴウハヤ,多様な魚種の中で日本よりも
ひっそりと過ごしているカマツカ…夢のようなひと時でした.水中で見る魚たちの美しさは格別です.

Re: No title

らいあます様
コメント有難うございます。

ミナガミヒガイはらいあます様に喜んでいただけると思っておりました。
こいつは側面から見るとヒガイっぽいのですが、正面から見ると横にずんぐりしていて、ヒガイとはまるでかけ離れているように見えるのです。


> Coreius, Paracanthobrama, Rhinogobioといったカマツカ亜科

これはまた随分変わったものに近いのですね。
のちほどじっくり論文を拝見します。
本当にカマツカ亜科は奥が深いですね。

Re: No title

Tommy様
コメント有難うございます。

水が思ったほど澄んでいなくて申し訳ございませんでした。やはり雨の影響はありましたね。
日程としては難しいかもしれませんが、5月下旬から6月の梅雨入り前の雨があまり降らない時期でしたら
婚姻色の残った魚たちを澄んだ水でご鑑賞いただけたかと思いますね。
個人的には、Tommy様に「上は黄金色、横は虹色」に輝くシュリを見ていただきたかったなと思います。真夏はシュリもちょっと黒くなってしまっていましたね。


> ボサの下に群れる何とも言えない顔つきとスタイルをしたミナガミヒガイ

この何とも言えない顔つきがミナガミヒガイにハマる点と申しましょうか^^;;;


> 多様な魚種の中で日本よりもひっそりと過ごしているカマツカ

このように表現されるTommy様には、シラヒゲカマツカ様が砂底の世界の中でビュンビュン駆け回ってはザクッと潜る様を是非お見せしたいですね。
プロフィール

アキミツ

Author:アキミツ
97年から韓国に住んでいます。妻は韓国人、子供たちは二重国籍です。
韓国の田舎で野良仕事からサーバー管理まで仕事をしつつ、ときどき川に行ってはガサガサして魚をとってます。

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