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保寧淡水生態館探訪

春になり、急な仕事もひと段落したので、さぁそれじゃあ川に行ってみようか、となるでしょう普通。
世間様はともかくとして、こんな辺鄙なブログをチェックしてくださっているような方々からはご賛同いただけるはず。
そりゃあもうわしとしては川に行きたくてウズウズしておりましたとも。

今回のターゲットは、昨年の目標であったMicrophysogobio全種ゲットの最後の種。ここで大敗を喫した됭경모치(トェンギョンモーチー 和名ヒメカマツカ Microphysogobio jeoni)である。この魚、금강(クムガン 錦江)の下流域でも採集可能な事が知られている。もうちょっと分かりやすく場所を挙げるならば、忠清南道の공주(コンジュ 公州)とか부여(ブヨ 夫余)のあたり。このあたりは古くは百済の国があったあたりだ。日本ともなにかと縁(対朝鮮史の中では、割と良い縁)のある地域だな。


というわけで行ってきたぜ錦江下流ガサガサ!




え?それじゃどうしてタイトルがガサガサになってないんだって?


いや、まぁ、その。とりあえず着いた場所がここ。



堰があって、サイクリングロードがあって、その先は錦江本流だ。


さて、ところが……タモ網を入れて水深がどれくらいか測ってみたら、堰の上も下もタモ網がすっぽり入ってしまってなお底に付かず。うわぁ……釣りならともかく、これじゃガサガサは無理だよ。
よく見ると、このあたりは樹が途中から水面の上に出ている。ようするに1mとかそれ以上の規模で水位が上がっていると言う事だ。

実はこれ、増水してこんなになっているのではなく、4大河川事業の結果こうなったのだ。
韓国の4大河川(厳密には多分韓国の5大河川のうち4つ)の本流に、それぞれ何箇所か堰ができた。その堰のせいで水位が上がったのだ。
自分は今回の場所の選定の際、工事が行われる場所の下流側は工事の影響で生態系にかなりダメージがあっただろうと推察して、4大河川事業でできた堰の上流側に来た。だがそこは想像以上に水位が上がっていた。南漢江の河川事業を見る限り、水位の上昇はそれほどでもないとたかをくくっていたが、錦江は事情が違っていたようだ。

場所を再考しない限り、ガサガサできない…!



苦し紛れに、にわか湿地帯のようになってしまっている場所で網を入れてみた。とれたのはモロコ一匹。참몰개(チャムモルゲェ 和名コウライモロコ Squalidus chankaensis tsuchigae)と思われる。き、厳しい。

今回の旅程は1泊2日。1日目は午後出発なので現地に着いても視察メインで本腰は入れず。ガサガサは深夜から2日目朝にかけて行い、2日目昼に帰るという予定だった。


というわけで、心を「1日目のサブイベント」に切り替えることにした。平たく言えば、1日目のガサガサを諦めたわけだが。

 
というわけで、行ってきました보령민물생태관(ボーリョン ミンムルセンテェグァン 保寧淡水生態館)。
山一つ越えて海側に出れば보령(ボーリョン 保寧)という市がある。西海岸高速道路のSAのすぐ近くにあるこの生態館は、実は当ブログでもしばしば出てくる「達人」조先生のいらっしゃるところなのだ。

西海岸高速道路のSAのすぐ近く、という場所は、聞こえは良いがアクセスのたやすい場所ではない。最近はサイクリングロードまで撮影しているDAUMのロードビューでも未踏の地域だからな。まぁでもカーナビの力でなんとか無事到着。
보령민물생태관
ここが達人の館。到着した際には達人は不在だった。この日達人は만경강(マンギョンガン 萬頃江)の水系にて生態調査をされていた。わしが生態館を訪ねることは前もって達人に連絡済で、夕食をご一緒させていただくと言う段取りになっていた。それで、お互いにちょっと遅く到着する旨のやり取りをしていたのだけれど、結果的にわしのほうが先に到着してしまったというわけだ。


達人は不在だが、到着まで中を拝見させていただいた。ずらっと並ぶ水槽。床には常に水が流れている。天井からぶら下がるブロワーチューブ。そのチューブは高圧パイプにつながっている。恐らくは屋外にコンプレッサーがあって、それがパワフルに全体にエアレーションのための空気を供給しているのだろう。
そして、床には恐らく昨日採集してきたばかりと思われる魚たちがバケツなどに小分けにされていた。

꺽저기(ッコクジョギ 和名オヤニラミ Coreoperca kawamebari)
おお!꺽저기(ッコクジョギ 和名オヤニラミ Coreoperca kawamebari)だ。「꺽저기」というより「オヤニラミ」と呼びたくなるな。昨年韓国の絶滅危惧種に仲間入りしてしまったオヤニラミじゃないか。

황쏘가리(ファンッソガリ 和名黄色コウライケツギョ Siniperca scherzeri)
天然記念物황쏘가리(ファンッソガリ 和名黄色コウライケツギョ Siniperca scherzeri)もいる。恐らくは天然ものではなくて養殖物だろうけど。写真に撮れなかったが実は「은쏘가리(ウンンッソガリ 銀コウライケツギョ)」もいた。

무당개구리(ムーダンゲグリ 和名チョウセンスズガエル Bombina orientalis)
무당개구리(ムーダンゲグリ 和名チョウセンスズガエル Bombina orientalis)がいっぱい。そういえば最近うちの職場の山で鳴いている。


チョウザメだ。いわゆるオーソドックスな철갑상어(チョルガプサンオ 鐵甲沙魚 和名カラチョウザメ Acipenser sinensis)ってやつかな?


こっちのチョウザメはなんかすごいことになっているけど。

가는돌고기(カヌントルコギ 和名ホソムギツク Pseudopungtungia tenuicorpa)
가는돌고기(カヌントルコギ 和名ホソムギツク Pseudopungtungia tenuicorpa)。お前たちまでいるのか。
他にも、写真を撮れなかったり写りが悪かったりして公開できないけれども、큰가시고기(クンガシゴギ 和名イトヨ 糸魚 Gasterosteus aculeatus aculeatus)、은어(ウノ 銀魚 和名アユ Plecoglossus altivelis)、뱀장어(ペムジャンオ 뱀(蛇)長魚 和名ニホンウナギ 日本鰻 Anguilla japonica)、드렁허리(ドゥロンホリ 和名タウナギ 田鰻 Monopterus albus)、눈불개(ヌンブルゲェ 和名カワアカメ 川赤目 Squaliobarbus curriculus)、꼬치동자개(ッコチドンジャゲェ 和名ウサギギギ Pseudobagrus brevicorpus)などが容赦なく水槽に入れられていた。

うはー。これは「展示館」に見学に行くつもりでいたら後ろからハンマーで殴られるような光景ですな(良い意味で)。ここは「活魚市場」ですな。いや、「活魚市場」よりもライブ感にあふれていると言うか。勿論これらは天然記念物や絶滅危惧種を含めすべて環境庁や大学から採集許可をとり飼育許可をとってやっていらっしゃる。そしてこれらの「活魚」達の「お得意先」はほとんど大学や専門機関なのだ。

もう少し達人について語ろうと思う。
達人の職業を分類で言うと、어부(オブ 漁夫 漁師)ということになってしまう。学校をろくに出ていないと言われる。だから大学の学士やら博士やらの号は持っていらっしゃらない。しかし、この川には何がいてどのように活動しているといった情報を、韓国全国の川について「これほど知っている方はいない」と言われるくらいに詳しい。それで大学や各種研究機関、政府等から要請を受けて全国各地の生態調査をされている。論文にも協力者として名前が載る。
魚をとる腕も韓国では最高峰と思われる。だから、院生がとある川のとある場所で生態調査をして、魚種や個体数をレポートしたとしても、達人がいとも簡単にその情報を覆すようだ。達人の生態調査には、大学の重鎮教授が同行される事も多いようだ。
魚類図鑑の「どういう場所でどのように生息している」という情報は、達人の調査結果が論文に反映され、それが引用されているという事例が多いらしい。
……といったこれらのことを、達人ご自身が自慢のように語っていらっしゃるのではなく、図鑑の著者や研究機関の研究員、大学の教授といった専門家の方々が口々に語っている。
実際、翌日はどこそこの川、その次の日はどこそこのダム、その次の日はまた別の川……というように、毎日スケジュールが入っている。(それで、生態館の水槽の管理をやる暇がなくて、もうちょっとちゃんと管理したいんだけどとぼやかれる達人)
昨年12月には韓国EBSのドキュメンタリー番組で「한국의 강(韓国の川)」と題する番組が制作されたのだが、4部作のうち第2部と第3部に映像を提供し、第4部では御本人が活躍している。日本の朝日TVからも取材を受けたそうな。
マスコミと言えば、新聞社にも付けねらわれたことがある、というのは以前旧日韓ちゃんぽんで書いた。いやぁしまったなぁ。記事を書く順序を間違えたな。今回の記事を上げる前に旧日韓ちゃんぽん記事を復活させるべきだったのに。


今回の夕食は達人조先生のほかに순천향대학(スンチョンヒャンデーハク 順天郷大学)の教授とご一緒させていただいた。この方は絶滅危惧種の養殖と復元を手がけている方だった。達人の館にはしょっちゅう来られていろいろとやり取りをされているとのこと。
食事の席では、実にいろいろな話を聞かせていただいた。シラスウナギが今年は少ないという話で、日本の密猟のニュースで1キロ200万円と言うのは韓国では安い金額だという話も上がったりした。
わしがらみの内容としてはこの辺の話とかこの辺のヒナモロコの生息環境の話とかをした。達人からは、最近왜몰개(ウェーモルゲェ 和名ヒナモロコ Aphyocypris chinensis)の個体が大きくなっているという話もあった。「『왜(ウェー)』というのは小さいと言う意味なのに、まるで버들치(ボドゥルチ 和名コウライタカハヤ Rhynchocypris oxycephalus)のように大きいのがとれる」と語っていらっしゃった。


達人조先生のオフィス。パソコンを活用してがっつりやっていらっしゃる。
ここでわしは達人から、今回わしが選んだポイントが何故ダメだったか、4大河川事業の結果川の生態はどうなったか、そして「4大河川事業の影響を受けていない場所」について、マンツーマンのレクチャーを受けた。もちろん達人は環境庁や地方公共団体などからの依頼を受けて、4大河川事業で作られた「堰」、そしてその周辺の「生態公園」や「魚道」等に関して自ら採集調査をされ、その結果を踏まえての話だ。
うああああ、そうだったのか。自分はどうして「上流」にばかり目を向けてしまったのだろう。目からうろこの思いだった。自分の目の付け所が間違っていたのだ。


そして、達人から「ここに行ってみな」と、ある場所を指定された……。
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tag : 保寧

コメント

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No title

アキミツさま

保寧淡水生態館、いいですね〜。
達人もすごい!

とても行ってみたいです。

Re: No title

らいあます様
コメント有難うございます。

こういう場所は、らいあます様のような専門家の方はきっとわくわくされると思うのです。
「展示館」とは違って、必要とあらばいつでも手にとって見ることも可能ですし、研究のためのサンプルとして持ち帰ることもできるわけですから。(もっとも日本に持ち帰る場合はまた別な法的手続きが必要となるでしょうが)
オイカワなどの「そこらへんにいる魚」でも韓国全国の各水系・地域ごとに揃えることのできる、韓国唯一の「研究室以外の場所」と言えるのではないでしょうか。

No title

アキミツさま

おっしゃるとおり、わくわくします。
持ち帰れなくても、訪れてみたい場所ですね。
韓国全国の各水系・地域ごとというのもすごいです。

日本ではミヤコとかの希少種ならありますが、一般種まで含めるとこういうところはなかなかないでしょう。
プロフィール

アキミツ

Author:アキミツ
97年から韓国に住んでいます。妻は韓国人、子供たちは二重国籍です。
韓国の田舎で野良仕事からサーバー管理まで仕事をしつつ、ときどき川に行ってはガサガサして魚をとってます。

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